日本に住んでいた頃、「家の中に盗人がおると思う。」
財布の中がさみしい時によく冗談で息子に言っていました。息子は息子で
「それは大変。福沢さんが居心地悪くて家出したんちゃう?財布の中綺麗にしときや。」と、ナイスな(?)返しをしてくれていました。そんな冗談なら家族で笑いあえたのですが、先日笑えない家族の盗人問題が発生したのです。
私達がアメリカにきてからBigmama(義母)の認知症状が不安定になってきていました。そんなある日、調子が悪かったようで朝から1日中ご機嫌斜め。
そして、こともあろうに機嫌が悪い原因が孫娘だというのだから驚き。なぜなら彼女は、誰よりもBigmamaのことを気にかけてくれていて、私達が日本にいる間もBigmamaの病院の予約から付き添いまでしてくれて、天気のいい日は愛犬と共にBigmamaを外に連れ出してくれたり、一週間に何度も家に顔を出したりしてくれる天使のような孫娘。私達も彼女には感謝しまくりでした。そんな彼女が悲しいことに今回のターゲットに。しかも窃盗というあらぬ容疑をかけられてしまって、これまた大変。
「彼女(孫娘)が私のお金を盗ったのよ。」
眉をひそめながら私と息子に話してきました。
「グランマ、それはありえないよ。彼女は、お金になんか困ってないし、何よりグランマのことを誰よりも愛しているでしょ。そんなグランマのお金を盗るなんてありえないよ。しかも最近グランマはお金を持ってないのにどうやってお金を盗るの?昨日だって足の爪を切るためだけに来てくれてたじゃない。」と息子が諭すと
「そうだけど、爪を切るには理由があったのよ。あなたは知らないだけよ。」
そういって怒った顔で私達を見る。
これはダメだ。
Bigmamaは、認知症を発症してから家にいるだけなので、お金は持っていないのです。家の鍵や免許証を何度もなくしているので、基本的には財布も持っていません。なのでBigmamaのお金を盗むのは現実的に無理なのですが、本人はわかっていないのです。孫娘の人格的にも決してありえない話ということも。
だけど、否定することは認知症には良いことではないことを私は知っていました。
かつて私の祖母も認知症でした。祖母も作り話をするようになり、私の父が祖母の作り話に酷く怒ってしまいました。祖母はしっかり者だったので父はしっかりしてほしい気持ちがあったのでしょう。しかし、認知症で𠮟りつけるのは最もしてはいけないこと。祖母は早い段階で父のことを忘れてしまい、父がどんなにお世話をしても祖母は父のことを「お兄ちゃん」と呼んで息子だということを忘れてしまいました。一人息子であんなに可愛くてしょうがなかった息子を。でも、他人である母の名前は最後まで忘れることがなかったんです。
母は、祖母が義母であったことから介護は大変だったけど、声かけなど実の母より確実に優しくできたと思う。だから義母は私の名前を忘れなかったのかも。と言っていたのを思い出しました。あくまでも母の見解ですが先人の知恵をかりて、私もBigmamaの話を否定も肯定もすることなく聞くだけにしました。息子はBigmamaも孫娘(彼にとっては姉)が大好きなので悪口を聞きたくなかったようで部屋を出ていました。
その後、話を聞いているとBigmamaが落ち着いてきたので孫娘に連絡することにしました。彼女に傷ついてほしくない。という私の勝手な思いがあったので彼女に電話をして今日は家に来ない方がいいと伝え、明日には大丈夫だと思うよ。と伝えたけれど、彼女も気になったのでしょう。様子を見にBigmamaの家にやってきました。
するとBigmamaは、今までに見たことがないくらい彼女に冷たく、目を見て話さず私を通して会話をし、まるでそこにいないかのような態度で、ほぼ無視を貫き通す徹底ぶり。孫娘も負けじと話しかけていたけれど、Giveupして帰ってしまいました。
大事な人にも攻撃的になってしまうことは祖母の時に体験したけれど、孫娘が小さい時から二人の関係を見ていたので私の方が悲しくなってしまいました。けれど、孫娘は笑いながら、
「めちゃくちゃ怒ってるやん!認知症ってこわいね!!」って笑い飛ばしていました。
きっと私がいない間も色々あって、これが初めてではないんだなーという事を悟りました。今回のことで介護するということが、どんなに大変か再認識すると共に家族の支えが合って成り立つことも、よくわかりました。ただ、認知症になっている本人が一番不本意だろうな。と、そのことが悲しくて、できるだけBigmamaにもそうだけど、彼女をとりまく家族の精神状態を平常に保てるようにフォローしたいいなぁ。と強く思ったのでした。
ちなみに孫娘の容疑は、まだ晴れていません(笑)孫娘といつまで続くかなーなんて大笑いしながら、のんびり構えられていることに感謝しながら今日も過ごしています(笑)
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